「湖水地方」を買えるほど成功したビアトリクス・ポターだって門前払いされている……目標は大きく持った方が逆に気が楽だ
13年間のOL生活を引退し、フリーランスとなった2015年1月。
なんのコネもないが、とにかくライターになろう!と思った。
東日本大震災&自分の体調不良を経験し、
「やりたいことをやりながら生きていきたい!」と、心底思ったからである。
私の場合、やりたいことは山ほどあるのでどれを生業にするか悩んだが、
「文章書くの得意だし、ライターならやれるかも?」
などと激甘のもくろみで始めてみた。
すべての人間がやりたいからといって、やりたいことをやれるわけではない。
人間として生きる以上、お金を稼いで生活をしなければならないからである。
もちろん、私もお金を稼いで生活をしなければならないが、
ここで、私の挑戦の後押しをしてくれるありがたい協力者が現れた。
夫である。
「やりたいことをやって暮らしていきたいなら、会社を辞めて本気でやってみろ!
その代わり5年で成果を出せ。それまでは面倒みてやる。」
と、ありがたいお言葉。
その言葉に甘えて、ライターとして模索しながら毎日を過ごさせてもらっている。
もうすぐ丸3年経つ。
まだ、夫の扶養内の売り上げしか上げていない。
せめてOL時代の収入くらいまでは、とりあえず稼ぎたい。
あと、2年しかない!
などとちまちました目標を考え、焦っていたのだが……
最近、夫が
「早く、湖水地方を買ってくれ」と言ってきた。
分かりやすく言うと、イギリスの絵本作家ビアトリクス・ポターになれ!と言っているのだ。
ビアトリクス・ポターは「ピーターラビット」の作者として有名である。
ポターは、幼いころから絵を描くのが得意だった。
身近にいるウサギなどの動物や、草花をたくさんスケッチしていて、その絵は、家族や親戚たちに大好評だった。
あまりの好評ぶりに自信を持ったポターは、スケッチにお話をつけ、出版社に持ち込む。
だが、「お嬢さんが道楽で描いた絵など誰が買うもんかね!」と門前払い。
どこの出版社も相手にしてくれなかった。
そこで、ポターは自費で出版することにした。
250部刷り上げて、2週間ほどで完売するほどの人気ぶり。
ついには出版社が、モミ手で近寄ってきて「出版させてください」とお願いすることになるのだ!
「ピーターラビットシリーズ」は、ポターの存命中から大ベストセラーとなったが、現在では、累計2億5000万部を超えているのだそう。
恐ろしいほど売れた「ピーターラビット」のギャラで、ポターはイギリス北西部にある湖水地方を買っている。
「地方」を購入したのは、動物たちが暮らす森の自然を守るためだった。
この、小気味よいビアトリクス・ポターのサクセスストーリーを踏まえて、夫の
「早く、湖水地方を買ってくれ」という発言を考えてみよう。
美しく取れば
「断られてもめげずにやり遂げろ!」ということになる。
そして、いやらしく取れば、
「湖水地方が買えるくらいの大ベストセラーを生み出せ!」
ということになり、「早く俺をラクさせてくれ」と言っているのだが……
夫としては、5年の猶予を与え私に投資しているようなものだ。
抗弁したくとも、こちらとしては文句が言えない。
(1233字)1時間30分
(反省)ビアトリクス・ポターについて書きながら調べたため時間がかかってしまった。